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ニューエコノミー時代の戦略論をめぐって(2) 2001年5月28日[BizTech eBiziness]より
前回「ニューエコノミー時代の戦略論をめぐって(1)」に引き続き、ニューエコノミー時代の戦略論をめぐって、岡田正大さん(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 専任講師)との議論を続けていきたいと思う。 梅田 さて、岡田さんが「ポーター VS バーニー論争の構図」を書かれたのは、ポーター論文と並べてバーニー(オハイオ州立大学教授)の「リソース・ベースド・ビュー」という論文が同誌に掲載されたからですね。 バーニーの日本での知名度は、ポーターに比べるとまだまだ低いので、バーニーについて簡単に紹介していただけませんか。 岡田 彼の標榜するリソース・ベースト・ビュー(RBV)とは、文字通り「経営資源に基づく視点」から個別企業の競争優位の源泉を捉えよう、という考え方です。バーニーは元々エール大学の社会学でPh.D.を取ったあと、独学で経営学を学んだ理論家です。米国経営学会の企業戦略分野の重鎮で、ポーターの産業構造に基づく戦略論に向こうを張った学者です。 私は本田技研のオハイオ工場時代に知己を得た同大に戻ってPh.D.課程に入学したのですが、そしたらバーニーもテキサスA&M大学からほぼ同時期に移ってきたんです。出会いとは偶然の産物ですね。 今、彼が書いた戦略論のテキストを翻訳しています。この本はポーターの戦略論を始め、RBVはもちろん、リアルオプション理論も戦略として解釈しなおしている力作です。日本では戦略論と言うとポーターの本しかないので、それに対抗すべくがんばってます。(笑) 梅田 「ポーターvsバーニー論争の構図」によれば、「インターネットの発達によって情報の非対称性が解消され、取引の効率向上が全ての市場参加者に同様の恩恵をもたらすため、企業間で差がつきにくくなり、そこから持続的競争優位を獲得することはより困難になる」ということです。 この点について、ポーターもバーニーも合意しているとのことですが、この認識は経営学の世界ではほぼコンセンサスが得られたものと考えてよいのでしょうか。 岡田 そう言ってよいと思います。ゲアリーハメルも同様の指摘をしています。前から私は「B2B Exchangeへの参加」による取引費用の削減は市場参加者には競争優位を一切もたらさないだろう」、という感覚を持っており、それをポーター、ハメル、バーニーはより一般的な表現で指摘していたので、なるほどそうだ、と思いました。 岡田 バーニーはポーター論文を読んでから書いているので、それが彼の独創かどうかはわかりませんが。やはり経営戦略の視点からは、「ニューエコノミーは企業にとってつらい世の中」という点が重要だと思います。 今後の企業戦略は「ネットエコノミーに乗ってひと儲けしよう」ではなく、ある面では「ネットエコノミーにおいてさえも(Despite the new economy)利益の上がる仕組み」を実現するために、一体どのようなリソースを集めて何をしなければならないのか、を考えなければならない状況にとうとうなったと理解しています。 梅田 ところで、バーニーは前回「ニューエコノミー時代の戦略論をめぐって(1)」の最後で私が触れた「世界の二極分化」についてはどんな考えを持っているのですか。 岡田 彼の視点は、そしてそれは企業戦略論の視点ですが、徹頭徹尾「個別企業の競争優位」にあり、梅田さんの言われる「世界の」2極分化に関して彼が言及した論文は全くありません。 それが「企業業績の」二極化ということであれば、バーニーの言う「経済的価値(V)の創出、稀少性(R)で模倣困難性(I)、それを有効活用する組織構造(O)というVRIOの条件にマッチした資源を持つか持たないか」が二極化の分かれ目、ということになると思います。しかしこれも分析のレベルはあくまで個別企業です。 梅田 さて、私もコンサルタントとしての専門は「日本のハイテク企業戦略論」なので、「個別企業に対するメッセージ」という文脈では全く同感できるのですが、同時に、IT革命が我々の社会にどんな影響を及ぼすのかということに強い関心があります。 その観点で「これからは世界中のありとあらゆる部分で二極分化が激しく進行していってしまうのではないか」という強い危機感を抱き始めています。 ■
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