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巨大化する米国の「eクリスマス」 1999年11月22日[日経ビジネス]より
シリコンバレーは「2回目のeクリスマス」を迎え興奮状態に入った。 たった6週間で数千億円規模の商品がネット上で売買された昨年のホリデーシーズン(11月末の感謝祭からクリスマスまで)は、後に「eクリスマス」と命名され、「普通の人々がありとあらゆる商品を、気軽にネットで買うのが常態」となる近未来を強く印象づける結果となった。この現実は、ネット企業にますますの自信を与える一方、インターネットとは無縁だった既存大企業を震撼させることになった。放置すればネット企業の勢いによって自社が脅かされる構図が、現実感を伴ったイメージとして目前に提示されたからだ。
ネット上で1兆円規模の売買確実 大型総合店のシアーズ、ノードストローム、文具・オフィス用品のオフィスデポ、おもちゃのトイザラス、生活必需品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、衣料総合のギャップ、ジーンズのリーバイス。 枚挙にいとまがないが、共通するのは、長い年月をかけて営々として築き上げてきた業界トップの地位を脅かされた一流大企業が、一斉に本格派ウェブサイトを構築し「2回目のeクリスマス」に本気で備えていることだ。 一方、新興ネット企業は、数十億円単位のカネをマーケティング・キャンペーン(テレビCM、破格のディスカウントクーポンの大量配布など)につぎ込むことで「eブランド」を構築し、既存大企業を迎え撃つ構えだ。 ネット企業の自慢は、何よりもまずスピード、敏捷性、若いエネルギー。そして「過去のしがらみ」のなさゆえの価格破壊や新ビジネスモデルの提案。ベンチャーキャピタルからの潤沢なリスクマネーに加え、株式公開によって得た巨額の資金を一気に勝負につぎ込む蛮勇。そして、莫大な成功報酬を約束した上で獲得した優れた人材が寝ずに働く熱狂である。 既存大企業の武器は、ブランド力と構築済みの事業インフラ。顧客との間で長年にわたって築いてきた信頼関係や、産業・商品・顧客に関する知識、サプライヤーとの提携関係。そして、トップがリーダーシップを発揮しさえすれば即戦力たり得る従業員総力を、一気に結集できる組織力である。 突き詰めていえば、スピード、才能、ブランド、顧客との間に築く直接の関係、リスクテイクする心といったネット経済における新しい成功要因をめぐって、新旧の経営システム間競争がまさに始まったのである。
遅すぎた? ウェルチのネット参入 日本では「あのウェルチまでがそう言っているのなら」とネット事業への関心を深めた大企業経営者が多いと聞くが、シリコンバレーでの反応は「さすがのウェルチも少し遅れたね」という感覚である。 1994年から始まったインターネット革命の竜巻は、まずインフラ提供側の情報技術(IT)企業を巻き込んだ。そして昨年のeクリスマス以来、大手流通企業や消費者向け製品メーカーをeコマースの世界に吸い込み、さらに今、ネットとは何の縁もなかったGEのような成熟産業の大企業をも呑み込もうとしている。
そしてこの巨大な竜巻は、好むと好まざるとにかかわらず、もうまもなく日本に上陸すること必定なのである。
■ 掲載時のコメント:米国ではネット社会やニューエコノミーを「自分の問題」としてとらえた深い研究があらゆる観点から進行中。「バブル」「錬金術」と片づけてしまう経営者が多い日本とのギャップを痛感すると言う。
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