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ネット産業第2ラウンドの行方は?

2001年1月22日[日経パソコン]より

 この原稿を書いている2000年12月初旬現在、ナスダックの続落傾向にはまだ歯止めがかかっていない。2000年を振り返って2001年を展望するには、やはりどうしても米国ネットバブルの総括は避けて通れまい。

 米国ネットバブルの発生要因は、次の3点に集約される。

(1) 1995年8月のネットスケープ・コミュニケーションズ公開以来、可能性が巨大でありさえすれば、利益が出なくても、ときには売り上げが上がっていなくても、株式を公開できるという楽観的ルールができ、それが肥大化していったこと。

(2)「誰よりも先にブランドを確立し、顧客を獲得し、ある分野のリーダーになることが勝利の道」との盲信から、異常なまでの早い者勝ち競争が起き、明確なビジネスモデルもないまま、従来型メディアへの広告宣伝費、Webサイト構築や技術開発に巨費を投ずる状況に、各社が駆り立てられていったこと。

(3) しかも、その競争の中で、何から何まで「無料化」するという刹那的な過当競争が起きて、「消費者以外はすべて疲弊する」という状況が起こってしまったこと。

 私は2000年初めの「日経産業新聞」に「「可能性」より「利益」示す時」という文章を書き、無料プロバイダー事業などを題材に「無料化競争」の危険について問題提起した。また、本誌2000年3月6日号でも「ネット産業、利益実現かバブル崩壊か」という文章の中で、2000年のキーワードとして「利益」という言葉を挙げ、ネット産業の戦略転換がいまこそ重要だと考えた。

淘汰が始まるネット企業

 しかし現実には、ネット産業に戦略転換を果たす間を与えることなく、バブル崩壊という形で市場が激しく動いた。市場は、「過ち」を犯した企業群が早期に淘汰されることを強く求めたのである。そしてそれが現在も継続中で、今年のeクリスマスはB2C企業群にとって「最後の勝負」となる。2001年は、初期ネット企業群にとって、厳しい淘汰の年となろう。

 米国ではもう既に、安易な株式公開はできなくなっているし(1)、未公開段階で「利益を生み出しそうもない」ビジネスモデルは徹底的に排除され、リスクはできるだけ未公開段階に封じ込むという基本がはっきりし(2)、無料化競争を主張する企業には誰も投資しなくなった(3)

 その意味では、バブル崩壊後も雨後の竹の子の如く生まれ続ける新しいベンチャー群には、過去の「過ち」が是正された「新しいルール」が適用されている。この辺りはやはり「シリコンバレーの凄み」と言っていいと思う。ネット産業第2ラウンドでの成功を虎視耽々と狙う水面下のエネルギーに、衰える兆しはほとんどないのである。

 その米国で最もホットで、バブル崩壊にもかかわらず、ベンチャー投資が依然として活発に行なわれているのが、ワイヤレス関連領域である。

 2001年最大の注目は、日米ワイヤレス対決だろう。iモードの爆発的普及によって、いま日本は世界の最先端を走っている。日本が先行し米国が追走するという珍しいレース展開となっているからこそ、この対決から目が離せない。通信業者の世界に徹底的競争原理が働くと同時に、多種多様なアプリケーションアイデアがシリコンバレーメカニズムで生まれる米国。NTTドコモを中心とした産業発展がうまくいっている日本。鮮やかな対照を見せる2つの産業構造の対決は興味津々である。

 NTTドコモの快進撃はとどまるところを知らず、積極的な欧州・アジア展開、AOLとの提携発表に続き、AT&Tワイヤレスへの資本参加(1兆792億円で、同社株式の16%を取得)も正式に発表された。「iモード」世界展開は果たして現実のものとなるのか。仮にそうなった場合に、NTTドコモ以外の日本企業はその恩恵に預かってグローバルな事業機会を追求することができるのか。日本発グローバルの本格派ベンチャーはワイヤレス分野に生まれるのか。2001年は、日本企業の真の実力が試される年になる。

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