Muse Associates Pacifica Fund JTPA Mochio Umeda





The Archive

2003/02/07


Pacifica Fundの同僚Tim OrenのBlogを公開することにした(ブックマークにも追加しておきました)。VCがBlogをやるというのは極めて珍しく、いろいろと悩んだのだが、「Let’s see how it goes!」ということでスタートさせた。

2/6のBlogでは、Jeremy Allaireがマクロメディアをやめる話を書いている。

「He is founder of the eponymous software company which created Cold Fusion, and was a development partner of engineering groups managed by myself and fellow VC Bruce MacNaughton during our CompuServe days. Allaire and Cold Fusion were acquired by Macromedia in early 2001. Now two years on (and presumably fully vested and out of his lockups) he's leaving Macromedia to become EIR at a Boston area VC firm. Welcome to the investor side of the table, Jeremy, and I hope the next thing is as cool as the last.」
関わったベンチャーの株式は、一定期間コミットして働いた代償に取得できる(たとえばxx万株のオプションをという約束が契約時にあったとしても、契約のすぐ何ヶ月か後に退社してしまったら、そのxx万株のほんの一部しか所有が確定しない。所有確定する株式数は時間とともに増えていく)のだが、「fully vested」というのは、その約束の期間が満了しているという意味。また「out of his lockups」というのは、買収や株式公開によるexitの直後からある一定期間たたないと株式の現金化ができないのだが、その期間が既に過ぎている、という意味。つまり辞める期は熟していたということだ。

「EIR」というのは、「Entrepreneur in residence」の意味。ベンチャーキャピタルの一員となり、そのベンチャーキャピタルに流れてくる投資案件のすべてまたは大半に目を通す権利を得る。Jeremyにとっては、その中から新しいチャンスを見出して、最も興味があって、最も有望と思えるベンチャーを選び、その会社の経営に参画していくチャンスを得る。ベンチャー世界でトラックレコードのある人たちのみに用意される、次のステップを見つけるための非常においしいポジションである。一方、投資家の立場からも、投資先ベンチャーに経験豊富な経営者をアサインするのは最も重要な仕事の一つなので、両者にとっての利害が一致するわけだ。投資家とベンチャーのミーティングに、EIRは投資家側の一員として参加する。だから、「Welcome to the investor side of the table, Jeremy」なのである。

Timはしゃべるときも書くときも、できる限り簡潔な表現を指向するので(正直にいえば、ときどき困ってしまうことがある)、以上、若干の解説を付け加えた次第。

2003/02/06


ハーバードビジネススクールで1/17-19に開かれた「Cyberposium 2003」の報告(7つのパネル)がまとめられた。7つのテーマは、

(1) Digital products and services (How a new generation of digital products and services will impact businesses and consumers)

(2) Homeland Security (September 11 and the establishment of a Department for Homeland Security have created immediate opportunities and challenges for the industry)

(3) Pervasive Computing (Tiny computers that blend into the fabric of our daily lives are starting to help us live healthier lives, predict the breakdown of our machines-and may potentially invade our privacy.)

(4) P2P and music swapping (Peer-to-peer networks such as Kazaa threaten the life-or at least the competitiveness-of the recording industry, many would agree. But is the answer a carrot , a stick , or something in between?)

(5) Telematics (Is your car the next great point-of-purchase opportunity for service providers? Could be-if providers can figure out what customers want.)

(6) Digital TV (Digital television and services such as video on demand will revolutionize the way we watch the tube. But when? A panel of industry insiders examines why the transition to HDTV and other digital entertainment has been so slow.)

(7) Web Service (Web services are being touted as the latest, greatest technologies. So late, in fact, they aren't even on most of the general public's radar yet.)

である。それぞれの報告はコンパクトにまとまっているので、ぜひご一読を。


シリコンバレー在住の読者の方へお知らせ。このBlogでもご紹介した、僕の師匠Gordon Bell氏のMyLifeBitsプロジェクトについての講演が2月11日夜に、Palo AltoゼロックスPARCのオーデトリアムで開かれる。BayCHI主催で、誰にもオープンで入場無料。BayCHIとは、Bay AreaのACM Special Interest Group on Human-ComputerInteraction(CHI)のこと。こうした会での、企業を越えてのSocializingは、シリコンバレーの良き伝統である。

2003/02/05


UCLAの研究によると、ネットの普及によってアメリカ人のテレビ視聴時間が減っているとのこと。詳しいレポート(89ページ分) もダウンロードできる。

ところで、テレビといえば、FCCチェアマンのマイケル・パウエル(コリン・パウエル国務長官の息子)が、1月のConsumer Electronics Showの質疑応答で、Tivoを称賛して、

「TiVo is God in my household. I can't wait to walk in the house each day to see what it's recorded for me」
と口を滑らせたのが大いに話題になったし、今も話題になり続けている。

言うまでもなく、TiVoのようなPVRが可能とする、コマーシャルすっ飛ばし機能や、番組ファイル交換機能は、テレビ業界との軋轢を生むもので、その軋轢の行事役とも言うべきFCCチェアマンとしては軽率な発言だったが、思わず個人としての本音をしゃべってしまったということなのであろう。

Electronic Media誌の「He should know better」は抱腹絶倒。

「He said that he would like to see a feature that would permit DVR owners to exchange recorded shows with others. "Is there a way to share a program with my sister? She loves TV as much as I do," Powell asked. Consumer Electronics Association President Gary Shapiro, who moderated the Q&A, couldn't believe his ears. The show-swapping feature, which is currently available on ReplayTV's DVR, has been criticized by the entertainment industry for violating its copyrights. The industry, which is suing ReplayTV, believes the value of its content would be diminished if show-swapping becomes commonplace. Why would anyone buy a DVD of a TV show or movie when he can get it for free from a friend? Noting that the debate may come before the FCC, Shapiro answered Powell's question by saying: "It's up to you, actually."」
まるでギャグのようである。

Wiredの「TiVo: The Rise of 'God's Machine'」のタイトルも、マイケル・パウエルのGodという発言以来、TiVoについた呼称である。

「Broadcasters and their program suppliers have had almost total control over how we view their products since the dawn of TV. The real magic with TiVo and other PVRs isn't the ability to skip commercials, but rather the unprecedented opportunity to wrest nearly absolute control over the time and manner in which programs will be viewed. Skipping or deleting commercials is but a cherry on the sundae.」
この記事はPVRの現在と将来の可能性についてよくまとまっているものなので、興味のある人にはお勧めである。


Always Onからトニー・パーキンスの「Hot deals and Hot times in Israel」。まずはやっぱりそうなのかと深くため息をつきながらも驚いてしまう「現在は第三次世界大戦の最中にあるのだ」というイスラエル人の世界認識。

「“When did World War II start being called World War II?” Jonathan began. “What’s going on is beyond a skirmish, it’s a titanic struggle of good versus evil.” To support his this view, he noted terrorist events in Kenya Bali, Moscow, Tunisia, and New York. “It is pretty clear we are in a World War III and Israel happens to be on the front lines.”」
しかし、それはさておき。。。。

そんな状況下でも、なぜベンチャー投資とスタートアップが活発で元気がよいのか、というのが本稿のテーマ。 第一にカルチャー。

「Technology and entrepreneurship is about a courage and fostering a ‘change the world’ culture」
第二に内需が小さいからグローバル指向が当たり前であること。
「It is also a given for an Israeli entrepreneur that you have to go global and sell your product in far away places to be successful, which is good training in times you have to strain a little harder to find revenues.」
第三にコア・テクノロジー指向。
「Israeli entrepreneur’s have always been about producing hard core technology.」
具体的に、2003年にIPOを果たす可能性の高い企業として、Business LayersChiaroDealtimeの三社を挙げている。
「all of which are still private and may well go public in 2003. Business Layers is security software and service play, that is experiencing triple digital revenue growth. Backed by $210 million in VC money led by Sevin Rosen (who backed Ciena), Chiaro is a stealth-company that boasts the world's fastest router. Run by Ken Lewis, an ex-Alcatel honcho, Chiaro just beat out Cisco and Juniper for a big US government contract. And Dealtime is a comparison-shopping service for consumers, that is currently the fifth most visited e-commerce site on the web. These numbers are boosted by OEM deals with Google, Alta Vista, Lycos, iWon, and Earthlink. The company also has a seasoned CEO, Dan Ciporin,who was previously VP of card member services at Mastercard.」
この三つのサイトを調べるとよくわかるが、どれもイスラエルの会社ではなく、創業者がイスラエル人のアメリカの会社。この三社がIPOを本当に果たせるかどうかは別として、公開するとすればNASDAQであろう。

自国の才能を開花させるのに、アメリカのインフラ(高等教育、創業インフラ、未公開資金調達インフラ、株式市場)を戦略的に活用するとは、こういうことなのである。

2003/02/04


もう読んだ人も多いかもしれないが、村上龍のJMM ・2月3日号は、銀行の増資をテーマに、日本の現実を浮き彫りにしている。今回の村上龍の質問は、

「三井住友フィナンシャルグループに続いて、みずほフィナンシャルグループも増資を発表しました。単純に考えて、公的資金の注入や国有化の論議の対象だった両行に、増資の引受先があるということが極めて不思議です。増資に応じる金融機関や企業には、いったいどんなリスクとインセンティブが考えられるのでしょうか?」
である。

三井住友へのゴールドマンサックスの増資と、みずほへの日本企業各社の増資は全く違うというのが、回答のエッセンスである。

前者については、

『「今、日本で最も健全といわれる銀行の株式です。配当利回りは何と4.5%の25年間保証つき、しかもこの銀行株を1500万円分買えば、あなたが投資した別の案件で損失が出た場合には2500万円分まで銀行が損失を補填してくれます。」投資の桁がいくつか違いますが、こんな株式、余裕資金があれば私も買 いたいところです。残念ながらこの条件で三井住友FGが2月8日に発行する予定の優先株式1503億円を引き受けるのは外資系の投資銀行ゴールドマンサックス(GS)です。』(近藤誠氏)
『ゴールドマンサックスによる三井住友フィナンシャルグループへの出資の条件なら、引き受け先はいくらでもあるでしょう。むしろ、「極めて不思議」なの は、既存株主から不満の声が聞こえてこないことです。ひょっとすると、出ているのかもしれませんが、少なくとも、メディアはあまりその声を伝えていないように思います。(1)年4.5%の配当率に加え、(2)普通株への転換条項として付与されているオプション部分の価値もまる取りで、(3)ゴールドマンサックスの投融資業務について、信用補完まで行う。また、この(3)の信用補完を担保する意味で、ゴールドマンサックスの発行する証券を三井住友が購入するわけですから、当初の資金の流れからすると、ゴールドマンサックスには資金負担すら発生しない可能性もあります。これだけの好条件なら、誰でも出資に応じるでしょう。一方、既存株主の立場からすると、本来、自分たちのものになったかも知れない利益がゴールドマンサックスに向かうわけですから、異議を申し立ててもおかしくはありません。』(北野一氏)
で言い尽くされている。さらに山崎元氏は、ゴールドマンサックス側がSECに提出した資料を読んで丁寧な解説を加えている。

一方、後者、つまり「みずほへの日本企業各社の増資」については、三ツ谷誠氏(僕はこの人のコメントをいつもいちばん先に読む)などは、もうばかばかしくて まじめに答える気にならぬ、という意思表示(たぶんそうだろう)として、欽ちゃんの24時間テレビでの一億円募金チャリティの話をしたあとに、

『まさかそのキャンペーンに経営陣が黄色いTシャツを着て、「目標は1兆円です」と銀座をパレードすることはないでしょうが。(中略) 合理的な経済人とし ての計算の世界でではなく、もっと別の動機も加味された世界で行われる「壮大な日本的儀式」であると考えるべきでしょう。』
と言っている。 菊池正俊氏は、
『同行がどの企業にどの程度の出資を求めるかは正式には明らかにされていませんが、23日の日経報道によると、増資決定後の22日の株式市場では、みずほHDと取引関係が深く、引受候補と目されるキヤノン、エーザイ、JR、電力などの株価が下落しました。(中略) S&Pは同行の増資に応じると目される大手生保に対して格下げの可能性を示唆しました。』
と書き、トヨタのトーメン支援の問題もあわせて同じ構造にあることを指摘している。

ついに、日本経済は、トヨタ、キャノンといった数少ない「グローバル競争の勝ち組企業」が蓄えた現金にまで狙いを定め、破綻企業の処理に使うスキームに乗 り出し始めたのである。残念なことだ。


IEEEが1月29日に、WirelessMAN(Metropolitan Area Network)標準規格の802.16a規格をapproveしたが、これは米国での重要な動きとして注目しておく必要があると思う。

「Roger Marks, chairman of the 802.16 committee and a wireless director at the National Institute of Standards and Technology's labs in Boulder, Colo., said industry discussions are inevitable as to whether 802.11 and 802.16 wireless specs are complementary or whether they overlap. In an ideal world, Marks said, 802.16a can serve as a backbone for 802.11 hot-spots. Still, some wireless LAN advocates promote 802.11's use as a MAN, even though its medium-access control protocol is fundamentally optimized for shorter-range topologies. At the same time, Marks said, others have talked of using 802.16a within the enterprise as an adjunct to 802.11a or 802.11g. If the 802.11e working group has trouble providing true quality-of-service prioritization for wireless LANs, then it might make sense to take 802.16a directly to an end user, Marks said. Otherwise, "it's more efficient and more cost-effective to look for the ways 802.11 and 802.16 complement each other."」
Wireless MANについては、WiMaxというフォーラムが作られている。

802.11における同様の団体WECAができたのは1999年だから、802.11が「WiFi」の愛称で呼ばれるように、何年か後に802.16をもし「WiMax」と皆が呼ぶように なったときには、市場が爆発的に広がっているときなのであろう。むろん誰にも知られぬまま消えていく可能性だってあるが。興味がある人は、技術的には「The IEEE 802.16 Working Group on Broadband Wireless Access Standards」のサイト、誰がこの標準を推進しようとしているかについては、WiMax Forumをご参照。

2003/02/03


2002年にIPOを果たした数少ない企業の一つNetflixが、そこそこ順調にビジネスを展開している。NetflixはオンラインDVDレンタルの新業態。

「Netflix is the easiest way to rent movies on DVD. With no due dates and no late fees, Netflix lets you choose movies over the Internet from our extensive selection of DVDs - over 12,000 titles. Every week we add new titles, enough to keep even the biggest movie buff busy. Movies are delivered to your address by US mail in postage-paid return envelopes and you can keep them as long as you like for a flat fee of $19.95 per month.」(同社サイトより)
月額19.95ドル支払えば、返還期日も遅延料金もない。たまにしか映画を見ない人にとっては高いが、ヘビーユーザーにとっては便利な価格設定になっている。 僕の友人の中にも会員がけっこう居て、サービスの評判もいい。去年5月のIPOで$82.5mil調達。売上高は$152.8mil(最新の四半期の赤字は$2.3mil)。会員数はまもなく100万人に到達する。株価も健闘している。

1/27のサンノゼマーキュリーニュース「Netflix adds its name to dot-com survivor list」 によれば、ウォルマートが後発で同じビジネスを始めたという。これからが、オペレーションで勝負の正念場。アイデア勝負ゆえこういう熾烈な競争をいずれは勝ち抜かなければならないベンチャーを、Execution Playという。ちなみに、この記事の最後のLockup periodというのは、創業者などインサイダーが株式公開してから株を売ってはいけない期間のこと。

Wired誌12月号でも、「The Netflix Effect」という長い記事が掲載された。

「"The dream 20 years from now," he says, "is to have a global entertainment distribution company that provides a unique channel for film producers and studios." He nods toward the mermaid logo above my head. "Starbucks is a great example. Howard Schultz talks about building the brand one cup at a time. I'd love to be Howard Schultz. As Starbucks is for coffee, Netflix is for movies."
"But there's already a Starbucks for movies," I say. "It's called Blockbuster." He was waiting for that. "Blockbuster is the Dunkin' Donuts of movies. When Starbucks came out, Dunkin' Donuts said, 'Three fifty for a coffee just because it has steamed milk in it? That's a niche.'"」
ビジョンは「global entertainment distribution company」。ブロックバスターがダンキンドーナツで、Netflixがスターバックスなのだとのこと。本当かな?


ハイテク産業やシリコンバレーはやたらにジャーゴンを使う。ジャーゴンとは、仲間内で使う専門用語のこと。新しいジャーゴンから、産業全体のムードがつかめるよ、ということで書かれたのがこの「Tech world's mood revealed in latest jargon」という記事。通読すると、自分の業界通の度合いが計れるかもしれません。

いちばん面白かったのは、

「YankeeTek founder Howard Anderson, a Cambridge-based venture capitalist, says that his fellow VCs have no idea what technology could become the next big thing. If VCs in the past were described as lemmings chasing after each new technology trend, Anderson says they're now more like penguins on an ice floe. One penguin jumps in to test the waters, and if he doesn't get eaten by a killer whale, another jumps in. ''Everyone's standing around on the ice right now, saying, `Why don't you try jumping in?'''」
案外、ベンチャーキャピタリストの中には、資金調達はしたが、技術もビジネスも何もわかっていない連中がけっこういて、まわりがどこに投資するかという情報だけを頼りに投資するのは事実。それを風刺しているのが「Penguins on an ice floe」である。

ついでに、もう一つ面白かったのは、

「Venture capitalists are working more closely than ever with their portfolio companies, teaching them how to plant crops in asphalt, says Woody Benson of Lazard Technology Partners in Wellesley. ''If you can make something grow in asphalt,'' Benson says, ''you can make it grow in grass.''」

2003/02/02


モルガン・スタンレーのチーフエコノミスト、Stephen Roachが1月31日に発表したメモは、米国経済についてかなり悲観的な見通しを示している。 毎日Blogにたくさんの書き込みをしているUCバークレイ経済学部教授のBrad Delongは、このローチのメモを読んで、

「Stephen Roach becomes even more gloomy about the U.S. economy. And I cannot see how to avoid following his argument to its depressing conclusion. Morgan Stanley's Stephen Roach has been worried about a double-dip in the United States for a full year now. If I read him correctly, he thinks that the chances of a return to recession are now bigger than 50-50. At some point in the next six months there is going to be a powerful negative external shock coming from somewhere--probably political or military developments in the Middle East. This shock will hit a stalling U.S. economy, and it is more likely than not to push it into recession. 」
と総括している。

ちなみに、Stephen Roachは、定期的に、モルガン・スタンレーのサイト「Global Economic Forum」にメモを公開しており、何日か遅れでその内容は日本語に翻訳されて、モルガン・スタンレー・ジャパンのサイトにアップされている。 最近のものでは、「当惑のダボス会議」(1/27)、「革命の失敗」(1/20)、「米国財政の落とし穴」(1/13)、「世界経済の成長手段」(1/6)、「通貨切り下げ競争の危険」(12/27)。

これからは、きちんと定期的にウォッチすることにしよう。


さっそくAlways-onから、ベンチャーキャピタリスト、David Titus(Windward Ventures)の「2002 was a Pretty Good Year for Entrepreneurs」。ベンチャーキャピタルの機関投資家からの資金調達は、2003年、2004年と、さらに困難を極めると書く。これは米国VC業界の常識である。

「The above is not an opinion, it is fact.」
VC業界に未投資の金が$100bilも眠っているとメディアは書き続けたが、Davidの試算ではピーク時で$50-60bil。それが二年前のこと。
「What has happened since? Very simple. VCs have invested something like $65 billion in 2001 and 2002 while raising just over $35 billion (and all of that was in 2001). That erases $30 billion of capital availability.」
その後の2001年と2002年であわせて、VCは$65bil投資したが、資金調達は$35bilしかできず(それもほとんどが2001年に行われた)、$30bilは投資原資が減少し た。2003年は投資額と調達額の差がたぶん$20bilくらい出るだろうから、もっと未投資残金はもっと減る。バブル期に資金調達済みの資金を投資した後、もう一回投資家をconvinceして資金調達できるVCだけが生き残り、VC業界のバブルの調整が一巡する。全く彼の言うとおりである。

一つ前のBlogで紹介したインテルのクレイグ・パレットが去年秋に欧州で行なったスピーチの中で、彼が言っているconcern

「My other concern is that all upheaval in the technology financial community threatens to stall innovation. We are in danger of not keeping pace with the demand for all these new technologies because of a lack of venture capital. If the VCs continue to remain on hold, we could see a drought of new ideas going forward.」
というのは、そういう調整中のVC業界が投資渋りをする可能性についてなのである。

以前本欄に書いたセコイアの資金調達の話も合わせてご参照。


Always on」という新しいサイトがオープンした。Blogのムーブメントに呼応するメディア側の動きとも言える。「About Always On」によれば、

「At AlwaysOn, we invite some of the smartest chiefs, geeks, investors, boosters and wonks to come play in our spontaneous and uncensored arena.」
とあり、実績のある人たちに限り、自由に書き込みをさせる(忙しい人の場合は彼らのスピーチの抜粋)という形でコンテンツを用意するものだ。記者やジャーナリストやライターではなく、産業界で本当に何か新しいことに携わっている人たち自らが、思いついたときに気の向くままに書いたものを読者に提供するという考え方である。むろんその内容に対するディスカッションも行われる。

非常に興味深いし、内容も今のところ面白いので、長続きすることを期待したい。こういう企画は、最初だけは面白くできるに決まっている。でも、それを持続さ せるには、色々な工夫と、力技がいる。しばらく様子を見てみたいと思う。たとえばスピーチの抜粋ということでいえば、インテルのクレイグ・パレットの去年10月のヨーロッパでのスピーチ内容、ビル・ゲイツの1/7のCESのスピーチ内容がアップされている。経営者では、他には、シスコのジョン・チェンバースのダボス会議報告、退任したAOLタイムワーナーのスティーブ・ケースの1/30の雑感がある。むろん、実際に誰が書いているかはもちろん不明だが、彼らの署名原稿の形態を取っている(少なくとも僕にはそう読めるが、何かトリックがあるのかな?)。

このAlways-onの編集責任者はRed Herringのトニー・パーキンスである。彼のAlways-On宣言とも言うべき文章「Media world will never be the same」の10か条によれば、「entrepreneurial enterprise and scientific discovery」を重視し、「fun and intellectual entertainment」を目指す。フォーカスは、「the business of innovation and its impact on global economics, public policy and investment」。Blogスタイルを志向するが誹謗中傷は許さない。メンバー間での協力はべたべたせず時間の無駄を生じさせぬよう、さらっとやろう、というような感じのことが書いてある。

このBlogでも、これから折に触れて、Always-Onを引用することにしようと思う。

>> Go to Blog Archive

Top
Home > Blog

© 2002 Umeda Mochio. All rights reserved.
contact info@mochioumeda.com